「Es,」

奇妙なご縁で主宰にお声がけいただき「Es,」という作品にエルヴィス・プレスリー役で出演した。

製作:亀川ふみか様

昨日最終日を迎え徹夜で打ち上げを行い目が覚めたら、もうエルヴィスサンドを食べなくていいんだという寂しさが急に襲ってきていたたまれなくなってしまった。そんなこんなで眠れぬ深夜にこの文章を書いている。

共演した役者さん・スタッフさんへの感謝と尊敬の気持ちは打ち上げで引かれるほどに伝えたので、この場では今回の演劇が僕にとってどのようなものであったかを振り返ろうと思う。

撮影:月館森様(露と枕)

この演劇に出るまで僕は何度か演劇を見たことがあった。様々な種類のものを見てきたが見るたびに共通した感覚を覚えていた。

それは心の中に沈殿して溜まっていた過去の感情をガラス棒でかき混ぜられるような感覚だ。そうして浮かび上がった感情たちはまた沈殿していくのだが、配列が変わっていたり一部は溶けてなくなったり新しい沈殿が追加されていたりする。

他のエンタメでも同様のことは起こりうるが、感情の動かし方に誘導があるものが多いなと感じる。感動するところ、笑うところ、勇気をもらうところなどある程度同じ感情を抱くと思う。 それゆえ感情の動きは大きいのだろうが、僕のようなひねくれた人間は「ここでこう感じて欲しいんだな」と分かってしまった段階で冷めてしまう。だからこそこんなに幅広い感情を揺さぶってくる演劇とはどんなものなのか興味が湧いていた。

 

稽古に入ると、頭の中に「なんで」が渋滞する最高に楽しい日々が始まった。なんでこの人はこんな演技をしているのだろう、なんで主宰はこんなダメ出しをするのだろう、なんでこのシーンは存在しているのだろう、なんでこのキャラはこんなことをするのだろう、なんでダンスをするのだろう、なんでこのダンスなのだろう、なんでこの音楽なのだろう。そしてその全てに絶対的な答えはなく、変更できる余地を多分に含んでいる。

そしてもっと楽しいことに、僕の役は実在のモデルが存在していた。 エルヴィス・プレスリーとはどんな人だったのだろう。どんな生まれで、どんな性格で、 どんな格好で、どんな歌を歌って、どんな映画に出て、どんなものを食べて、どんな人を愛して、どんな気持ちで死んだのだろうと想像することができた。そんなことを繰り返していくうちに、永田としてはどんな演技をしたらよいのだろう、この演劇における彼の役割とはどんなものだろうともやもや考えた。動画を見たところで素人の僕には自分の演技がどうなのかよく分からないし、あれが100点満点の演技だったとは全く思っていない。しかしこの演劇に携わった誰よりも彼のことを考えたし、好きになったし、憧れた。

撮影:月館森様(露と枕)

終演した今振り返ってみると、演劇は見るよりやる方が楽しかった。稽古の段階でたくさん心をかき混ぜるからこそ、お客様の心をかき混ぜられるのだと思う。僕の演技が何人の心をかき混ぜられたのかは分からないが、僕は彼の役を演じたことでたくさんの発見ができた。ありがとうエルヴィス。

そしてやっぱり答えのないものをグルグル考える作業が僕は大好きだ。どんな表現方法であれ一生何かを作り続ける人間でありたいなと思う。

 

今回、全く新しい「演劇」という方法をやらせていただいて本当に楽しかった。別の人格を通して何かを伝えるという取り組みは僕にとってとても新鮮で、もっともっとやってみたくなってしまった。これに学生生活を注いできた方々、これから注げる方々が羨ましくて仕方がない。せっかくのご縁ですし、連絡があればみなさんの公演見に行きます。

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