モンスターハウスに関する考察

昨日最終話を迎えた水曜日のダウンタウン(TBS)の企画、モンスターハウス。

悲鳴と愛憎の末にこの番組がもたらした現象を構造的に順を追ってみていく。

 

テラスハウスのヒット

2012年10月からフジテレビで放送されたリアリティー番組


この番組は、ひとつ屋根の下で男女6人が一緒に生活をします。 番組が用意したのは、素敵なお家と素敵な車だけです。台本は一切ございません。


引用:YOU

テレビのやらせや偏向報道などに敏感なSNS世代の若者にとって、TwitterやInstagramなどで入居者の日常を知ることができるリアル感や身近さは新鮮なものであり、絶大な支持を集めた。

モンスターハウスの元ネタは何を隠そうこの番組である。

相違点はクロちゃんをメンバーに含んでいるという点だけ。

 

テラスハウスの問題点

テラスハウスの反響はすさまじく、入居者の知名度が飛躍的に向上し、テラスハウスを機にブレイクする人も多くいた。
しかしこれが結果的にあだとなり「打算目的で入居したのではないか?」という疑念が生まれたり、テラスハウスに凸してしまう人が現れて実情を暴いたりと健全な番組運営が難しくなった。

この解決策として視聴者と入居者の間に一定のタイムラグを作るため放送媒体をNetflixに移行するのだがここでは割愛。

以上の状況を踏まえればテラスハウス式の番組はもう古いと言えるが、なぜ今になってこの番組が成立したのかを考えていく。

 

モンスターハウスの不信感➀

他局の人気番組フォーマットをそのままパクったうえ、入居者としてクロちゃんという「平成最後のモンスター」が加わるとなればこの番組が話題になることは必至。

入居者が事前にどこまで情報を知らされていたかは疑問だが、入居者はこの番組を機に知名度を上げたいんだなと視聴者が考えてしまうのは当然の流れであろう。

そして番組が始まってみればクロちゃんはカメラが回っているにも関わらず嘘・二股・グラス舐め・盗撮と悪行のオンパレード。そのほかにも甘い言葉(クロ節)を言う・手をつなぐ・キスを迫るなどといったモテテクニックを多数披露し、その気持ち悪さはそうとうなものだった。

自分のバラエティー番組における役割をよく理解しているクロちゃんであれば多少の奇行は予測できたが、作り手も含めてクロちゃんが想定を超えた動きをしたことは明確である。(この番組のプロデューサーである藤井さんのインタビューはこちら)

それにも関わらずなぜか入居者がみなクロちゃんを好きになるという展開はかなり違和感があった。

女性入居者が注目されるために目立とうとしているんだなと思われても何も言えない。

 

モンスターハウスの不信感②

モンスターハウスの中から1人を消すことができるくじが絶妙なタイミングで登場し、それがクロちゃんの追い風になったことにも違和感があった

クロちゃんが二股でヘイトをためている状況で黒服の番組スタッフが現れ、このくじを引くこととなった。流れ的に言えばまず間違いなく消されるのはクロちゃんである。

5/6の確率でクロちゃんが消される状況の中で1/6をクロちゃんは引き当ててしまう。

これによって自分に興味のない女性入居者をモンスターハウスから排除できただけでなく、男性入居者に「俺の恋愛を邪魔するな」と釘を刺すことにも成功している。

クロちゃんが偶然引き当てた確率もないわけではないが、やらせだと言ってくださいと言わんばかりの展開だ。

 

なぜ我々はモンスターハウスを見てしまうのか

これが通常のテラスハウスであれば興味が薄れて失敗に終わっただろうが、クロちゃんの圧倒的なモンスターっぷりは全く予測不可能なものであり多くの人にとってあまりに魅力的過ぎた。 毎回放送後にはクロちゃんの猟奇的なキャプチャ画像がTLに溢れ、入居者のSNSアカウントにコメントが殺到するなど反響はとても大きかった。

また、この分かりやすい不信感こそがさらなる議論を呼び、より多くの人の関心を引いたことも間違いない。ネットニュースが乱立し、クロちゃん以外の居住者への取材記事などもあった。それほど視聴者はこの番組の真実に興味があったことが分かる。

 

結末に関する個人的感想

昨日の最終回では指輪を使い回すという相変わらずのモンスターっぷりを発揮したクロちゃんが、オンエアを見た蘭ちゃんに生放送でフラれ、dボタンによる国民投票を行い、としまえんに設置された檻に入れられて一般公開されるという結末を迎えた。放送直後から多くの人がとしまえんに殺到し、企画が中止されるほどの騒ぎとなった。

この件についての個人的感想を述べたい。

 

➀クロちゃんへの仕打ちが非人道的である②この番組はやらせだ、という意見がTwitter上では多く見られた。

➀について、クロちゃんはこの番組で過去にもなかなかの思いをしている。(自宅に人が住み着く、資格も聴覚も奪われた状態で長時間吊るされるなど)それにも関わらず水曜日のダウンタウンに出続けている理由は明確。その芸風で自身を売っており、本人の了承があるからである。この仕打ちについてクロちゃんが訴えるならまだしも、第三者がアレコレぬかすのはお門違い。我々はこれを面白いと思うかどうかだけを判断すればいいのだ。その心配は逆にクロちゃんの良さを消すことに他ならない。

②について、近年乱立する「やらせ」に対する世間の異常な拒否反応は正直見ていて寒い。あなたはドラマを見て「やらせだ!」と言うだろうか?その番組を見てあなたが面白いと感じたり、感動したりできればそれ自体に大きな価値があるわけで、真偽を確かめる必要性なんてない。数カ月前に話題になっていたが「嘘を嘘と見抜く奴は増えたが、嘘を嘘と楽しむ奴はほぼ消えた」ということだ。そんなことではコンテンツの幅はどんどん狭くなってしまうよ。

 

 

僕がこの結末でまずいと思った点が二点ある。

❶たむけんが「国民」という言葉を多用していた点

今回のスペシャルは前述のように話題性たっぷりでありとても注目されていた。普段はこの番組を見ることがないような方々もたくさん視聴していたことだろう。そんな人たちにとってクロちゃんのモンスターっぷりを不快に思う人が多くいたことは想像に難くない。だが継続的にこの番組を見ている人であれば時たま行き過ぎた企画があることは周知の事実であり、「あぁ、また過激なのやったね(笑)」くらいの反応である。

これまでのクロちゃん企画のシステムでは地獄の軍団と呼ばれるかなりイカれた製作スタッフが、クロちゃんの異常性をそれを越えるような異常な執念で暴いていくというものであったため我々は第三者として笑うことができていたように思う。

しかし、今回やたらと「国民」という言葉を使って我々もこの片棒を担いだ共犯者で、クロちゃんは国民の敵であるかのように仕立て上げる演出はいかがなものか。不快になると分かっているであろうオンエアを見せ、その感情を利用して一人の人間を貶めるというのは集団いじめのようで正直笑えない人もいることだろう。そして今回は特に幅広い年齢層の方々も見ていたはずだ。それこそ今のテレビの視聴率を支えているような。

水曜日のダウンタウンは若者には圧倒的な支持を受けているが、視聴率としてはあまり高くない。テレビを見る習慣がまだ根強い40歳以上からの支持がなければヒット番組は生まれにくいのがテレビの現状だ。それにも関わらず上記のような仕打ちをしてしまうと、今後の番組の視聴率が非常に取りづらくなってしまうのではないか?さらに言えばクロちゃんという水曜日のダウンタウンにとってのキラーコンテンツを失うことになってしまうのではないか?ということを僕は危惧している。

 

❷クロちゃんと視聴者が接触できる機会を設けた点

あまりこのようなことは言いたくないが、この世には理解力が低い人や道徳心が欠けている人がまぁまぁいる。

毎話ごとの番組終わりに、クロちゃんの奇行に過剰に反応して「死ね」だの「キモすぎ」だのといった言葉を発信している人が山ほどいて、それのどれもが伸びていたことが何よりの証拠だろう。あろうことかリプで本人に直接伝えている愚か者も多数いた。そう、こいつらも大概モンスターである。

その中でもなぜか本気でクロちゃんに怒っている人もちらほら見受けられた。このような人々はドラマで悪役を演じた人をそのまま嫌いになるタイプの人であろう。この人々は非常に危険性が高いマジもんのモンスターである。

しかしそれはほとんどがネットの中で完結しており、クロちゃんが日常で見知らぬ人に何か言われたとしてもそれはあのキャラで自分を売っている以上仕方がない。

だが今回の場合は、クロちゃんと視聴者が接触できる機会が設けられてしまった。

あんな遅い時間の番組終わりにすぐとしまえんに向かうようなやつらである。 民度もモラルも低い野次馬であることは目に見えているし、あの中に前述のようなマジもんのモンスターがいたらどうなっていただろうか?あの程度の警備ではナイフをひょいと投げることなど容易にできた。事件にならなくて本当に良かった。

あれだけ人の感情を煽った後にあのような機会を設けることには全くもって賛同できない。

「こいつは叩いていい」と分かった時の人間の行動は非常に恐ろしいし、そこに集団真理が加わればそれはもはや地獄である。

番組が終わるどころでは済まない事件になる可能性があった。

  

断っておきますが僕はこの番組が大好きですし、今後も続いて欲しいなと考えています。

今回も生放送までの部分は好きでした。クロちゃんの人間臭さがとても出ていて面白かったです。


最後に

今日のニュースはどの局でもモンスターハウスのことを報道していた。

オワコンと言われて久しいテレビでこれだけ多くの人の感情を動かした藤井さん並びに製作スタッフはやはり凄いなと思わずにはいられない。

どうかこれからも面白い番組を僕たちに見せてくださいと願いつつこの文章を締めさせていただきます。

長文にも関わらず、最後まで読んでくださってありがとうございました!!!

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