何者

朝井リョウ(@asai__ryo)さんの「何者」を読みました。

就職活動を目前に控えた拓人は、同居人・光太郎の引退ライブに足を運んだ。

光太郎と別れた瑞月も来ると知っていたから。

瑞月の留学仲間・理香が拓人たちと同じアパートに住んでいるとわかり、理香と同棲中の隆良を交えた5人は就活対策として集まるようになる。

だが、SNSや面接で発する言葉の奥に見え隠れする、本音や自意識が、彼らの関係を次第に変えて・・・。

引用:新潮文庫裏表紙

以下、感想です。(極力ネタバレは避けます)

莫大な時間、無限の選択肢、様々な娯楽の解禁、学生という特権、、、

大学生という身分は何かを始めたり没頭したりするのに最適な時期で、ちまたでは人生の夏休みと形容されますがなんとなく分かる気がします。

十人十色な学生生活がありますが、そのほとんどが「就活」というひとまずのゴールに向けて動いています。

そしてそこから先は「社会」という楽しくも厳しい世界で生きていかなくてはいけません。

そんな大学生にとっての「内定」というものの価値の高さがこの本のカギです。

内定を得た人は大学生活(ひいては人生そのもの)を肯定され、その会社のネームバリューによってその人物が測られるかのような錯覚を見せます。

だからこそそのために必死で努力する人を「意識高い」と揶揄したり、「就活のために何かするのダサくね?」といった「ありのまま厨」が生まれたりするのではないでしょうか。

将来にも自分にも社会にも不安な大学生によるチキンレース、それが現代の就活の正体なのかなと本書を読んで感じました。

そんな就活を舞台に、これでもかというほど人間の醜い部分がこの作品では描かれます。

この作品の主人公は二宮拓人。

大学時代は演劇に打ち込んでおり、観察眼が鋭く人のふるまいや発言から多くのことを類推することが得意な人物です。

前述の「ありのまま厨」に近く、自分の周りの就活生や役者を観察しながら物語は終盤を迎えます。

ふとしたきっかけにより5人が心の内をさらけ出すシーンから怒涛の展開を迎えます。

『何者』という小説の魅力は、主人公の立場で感情移入し、安全な場所で傍観していた読者が、いきなり当事者になり代わるところだろう。

引用:新潮文庫解説

僕はこれをもろに体感しました。

ここからの話は非常に性格が悪いかつ、僕の個人的な話になります。(次の段落まで飛ばしていただいてもかまいません)

僕は大学院への進学を考えているのですが、いろいろな理由があってサマーインターンにいくつか応募をしていました。

「流しそうめんを竹の伐採からおこなったことがある」という強力なエピソードを持っている主は、幸運にもいくつかのインターンに参加が決まりました。

その最中のグループワークで「サークルで~」「長期インターンで~」「海外留学で~」というお決まりの自己アピールをする人たちを見て「だっせぇ~」と内心思っていました。

大した違いはないのですが、就活のためにおこなったわけではなく、自分たちで最初から最後までやり遂げたこの経験に自信を持っていたのでしょう。

また、結果に関係なくどのみち自分は大学院に行くという一歩引いた立場が人間観察を加速させ「こいつら必死かよ」と内心ほくそえんでいたと思います。

そんな矢先にこの本を読んだため、主人公に完全に感情移入してしまいました。

「この本は就活生あるあるをていねいな心理描写で書いた本なんだなぁ」くらいの認識で読み進めていた自分が急に当事者として物語に引きずり込まれ、ボロ雑巾のようになるまで叩きのめされました。

意識高く活動しているのに就活がうまくいかない理香のセリフ

「ダサくてカッコ悪い自分を理想の自分に近づけることしか、もう私にできることはないんだよ。(中略)その方法からも逃げてしまったらもう、他に選択肢なんてないんだから。」

深く心に響きました。

自分の理想とする「何者」かになるべくみんな努力します。

努力の方法は様々ですが、その方向は必ず自分に向いたものでなくてはいけない。

真面目に学び、本気で遊び、誰かを喜ばせ、日々内省することを繰り返すことでしか僕たちは「何者」になんてなれない。

僕に自分を振り返るきっかけを与えてくれた「何者」、ぜひ読んでみてください。

Netflixに実写映画もあります。(主人公の感情表現が一切なく、より感情移入して見られるのでこちらもオススメです)

明日から、いや、今から、僕は苦手な英語に取りかかろうと思います。

あなたはどうする?

ここまで読んでくださったみなさん、ありがとうございました!

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする